当館の調査・研究活動

世界自然遺産小笠原諸島から新種のカタビロアメンボを発見

オガサワラケシカタビロアメンボのオス成虫

 

石川県ふれあい昆虫館の渡部晃平学芸員が、世界自然遺産に登録されている小笠原諸島母島から新種のカタビロアメンボを記載・命名しました。カタビロアメンボ科の新種が小笠原諸島から記載されたのは、1959年以来64年ぶりになります。

本研究成果は動物分類学の国際誌Zootaxaに掲載されました。

 

カタビロアメンボ科は、アメンボ下目に属し、ため池や河川などの水面上または水際に生息する小型の水生カメムシです。この度、愛媛大学ミュージアムの吉富博之博士が母島で採集したカタビロアメンボ科の標本を詳細に観察した結果、未記載種であることが判明し、新種として記載・命名しました。

 

本新種は、ケシカタビロアメンボという種によく似ていること、小笠原諸島固有種と考えられることから、和名を「オガサワラケシカタビロアメンボ」、種小名は発見者の吉富博之博士に献名し「Microvelia yoshitomii」と名付けました。国内に分布するケシカタビロアメンボ、チャイロケシカタビロアメンボ、ケブカケシカタビロアメンボに似ていますが、後脚跗節長の比率、雄の前・中脚の脛節先端の形、雄交尾器(右把握器)の形で区別することができます。小笠原諸島では、父島、北硫黄島からケシカタビロアメンボが記録されていますが、実際にはオガサワラケシカタビロアメンボの可能性があるため、標本の確認に基づく再検討が必要です。

 

オガサワラケシカタビロアメンボが発見されたのは、母島の原生林の中にある水溜まりでした。このような環境は、降雨が少ないと容易に干上がってしまう不安定な水域です。本新種の基準標本には長翅型(翅があり飛翔できる個体)が多く含まれていました。長翅型の割合が高いという特徴には、頻繁に飛翔する必要がある環境に生息していることが関係していると考えられました。

  

論文情報

論文タイトル:A new species of the broad-shouldered water strider genus Microvelia Westwood (Hemiptera: Heteroptera: Veliidae) from the Ogasawara (Bonin) Islands, Japan

掲載誌:Zootaxa

著者:Kohei Watanabe (渡部晃平)

論文掲載サイト:https://doi.org/10.11646/zootaxa.5375.1.10